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Selfishly

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久遠の輪舞(後編)act2





~~~~~『 久遠の輪舞・後編 』Act2 ~~~~~






「くぁ~」
 だらしない態度で伸びをする兄を、アルフォンスは呆れた視線で眺める。
 つい2、3日前まで、瀕死の人間の、これが態度だろうか…。
 兄のエドワードには、良く驚かされはするが、今回ほど肝を冷えさせられた事は、初めてだった。
 元を糺せば、自分の体調の悪さにも気づかずに、ほいほいと任務を請け負ってきた兄のせいなのだから、
 自己管理の悪さを責めるしかない。 
 ――― 皆さんにも気を遣わせちゃったな・・・。
 巻き込んでしまったと、大佐や中尉からも頭を下げられた時には、
 本当にどう答えて良いのかと戸惑わされてしまった。
 その後も、兄の意識が戻るまで、忙しい中を何度となく、入れ替わり立ち替わり見舞いに足を
 運んでくれて、看病しているアルフォンスにも色々と気遣いをしてくれていた。
 ――― そんな皆の気遣いも余所に、この馬鹿兄は!―――
 ギロリと視線で突き刺したのを、本能で察したのか、エドワードが気後れした様に
 アルフォンスの方を窺ってくる。
「何!」
 語気強く訊ねれば、エドワードの頬が引き攣るのが見えた。
「ア、アル君? 君、何か怒ってるぅ?」
 猫撫で声で機嫌を取ろうとしても、アルフォンスは懐柔されないぞ、と強い態度で臨む。
「怒ってるに決まってるでしょ! 何で自分の身体くらい、気づかないんだよ!
 動物だって、もっと自分の事に敏感だよ!
 兄さんは、動物以下! その鈍感さは、昆虫以下、いや、
 昆虫も比べられるのが迷惑な位、鈍感生物だよ!」
「お前っ! それは酷すぎるだろ? 何で俺がよりによって、ミジンコみたいな微生物並みかよ! 
 はっ、まさかお前、遠回しに俺がミジンコみたいに…だとでも!」
 気色ばんで全然違う方向に進んでいくエドワードの頭を、軽く叩いてやる。
「いてぇー!!」
 頭を押さえて蹲る兄に、アルフォンスはしれっと返す。
「大袈裟だよ。 ちょっと撫でた位で、そんなに痛いはずないでしょ」
 馬鹿にしきった声音に、エドワードがムッとした表情で睨みつけてくる。
「お前なぁー! 痛いに決まってんだろ!
 鋼鎧で殴られて、痛く無い奴がいるかぁー」
 ガァーと吠え声を上げる兄に、アルフォンスは沈んだ声で話す。
「僕には判らないよ…。 兄さんの痛みや辛いときも、今の僕には気づけないんだよ?」
「アルフォンス…」
「だから、自分の身体の事だけは、もっと大切に気遣ってやって?」
 そう優しく諭す弟の言葉に、エドワードは声無く頷くしか出来ない。
 そして……。
「…ごめん。 心配かけた。 
 これからは、もうちょっと気を付ける…」
「うん、そうしてよね。
 で、軍部の皆にも、ちゃんと謝るんだよ?
 あ、あと大佐には、くれぐれもお礼をきちんと言う事!」
「えっー、でもそれは…」
「わかった?」
 上げようとした不満の声は、アルフォンスの威圧に遮られて、続ける事が出来なくなる。
 代わりに。
「…わかった…」
 渋々と了承の返事を返す。
「はい、良く出来ました。 じゃあご褒美に、何か買ってきてあげるね。
 兄さん、何が食べたい?」
 沈んだ空気を払拭させるように、アルフォンスが明るい声で話してくる。
「ご褒美ってな…俺は幼稚園児か。
 まぁ、良いけどな…。

 腹減った! 何か腹に溜まるもんがいい!」

 やっぱり幼稚園児並みじゃんと、思った事は口にせず、アルフォンスは、
「はいはい」と返事を返して、買出しへと外へ出ていく。
 エドワードは静かになった部屋で、腕を枕にベッドヘッドに凭れて、
 落ち込み気味の意識を持て余しながら、定まらない視線を宙へと向けていた。 そこに…。
 トントンと控えめなノックが、叩かれる。
「はい? どなたですか? 入って来ていいぜ」
 弟に知られれば、無防備すぎるとお叱りを受けそうな対応で、訪ねて来たらしい相手を迎え入れる。
「失礼するよ」
 そうやって入って来た相手を認めた途端、エドワードは思わず身体を起こす程、驚いた。
「体調はどうだい? 辛いところや、痛いところはないかな?」
 いつものエドワードの見知った相手らしからぬ、優しい言動に、受けたエドワードの方が、困惑する。
「やっ…、もう別に、どこも悪くない…」
 気まずげに伏せてしまった視線を、戻すのも躊躇いが起きる。
 そんなエドワードの胸中に気づかぬ風に、ロイはエドワードに労わりの言葉をかけてくる。
 居心地悪く、その言葉を聞き流しながら、エドワードは「ああ」とか、
 「うん」とか気乗りしない態度が在り在りの返答しか返せない。
 が、本当にそうかと言うと、それは全く逆で、ロイに感謝の気持ちと、
 足手まといになった謝罪をいつのタイミングで言えば良いのかと、思い悩んでいただけなのだ。
 そして、気づけば黙り込んでしまっていた相手に、拙いと思いながら目線を上げると。
 酷く疲れきった相手の顔色が飛び込んでくる。
「とにかく、座れば?」
 そんなロイを心配するが、出てきたのは横柄な言葉だけだ。

「いや…。

 …そうだな、長くなるだろうから、座らせて貰おうか」

 断りの後に、訝る程の間が空いて、ロイが腰を下ろしてくる。
 そして、長くなると断っておきながら、一向に話し出さない相手に、エドワードは奇妙な違和感を感じる。
 何となく普段に接している時の相手の…そうだ、覇気がないのだ。
 ロイは常に嫌味なくらい、自信ありげに振舞ってきた。
 それは弱みを握らせない為でもあるし、上に立つ者の心構えでもあるのだろうが。 
 対峙した時にいつも感じる、他者の追随を許さぬ気配が、今のロイからは感じられない、
 …薄くなっている気さえする。
 それに、どうしてこう、割れ物に触れるように、慎重な気遣いを自分に向けるのか?
 足手まといになった事を叱責されるのなら判るが、こんな風に、気遣われ過ぎることなど、
 エドワードには覚えが無い。
「何か変だな? あんたの方が病人みたいだぜ?」
 牽制するように軽口を叩いてみるが、ロイの反応は少ない。
「いや。 私は何でもない。 君が元気になってくれて良かったよ」
 ロイの言葉に、エドワードは唖然とする。

 ―― 何なんだよ、こいつの態度は? また新手の嫌がらせか?
 さっきから、妙な言動ばかりかけてきて……。
 まるで、…まるで俺を普通の餓鬼みたいに… ――

 自分の問いかけの中で、はっとさせられ気づかされた。
 ―― そうだ、こいつの態度は、大人がする子供に接する時の対応だ ――
 それに気づいて、エドワードの目の前が真っ暗になる。
 任務も無事に果せなかった自分に、見切りを付けられたのだろうか?
 だから、普通の子供に接するような、軽んじる本心を、慇懃無礼な態度で誤魔化そうと言うのか…。
『許さない』
 エドワードの中で、怒りが込上げてくる。
 対等でありたいと…、そう願ってきたのだ、ずっと。
 それを今更、普通の子供と同列に並べられ、扱われるなど、エドワードの高い矜持が我慢できる筈が無い。 
 

「言いたい事があんなら言えばいいだろ!! 今更、馬鹿な子供扱いをされる位なら、
 怒鳴られ殴られた方がマシだ!」
 急なエドワードの激昂に、ロイは驚いたように見つめてくる。
 何か言いたげに、その瞳が揺れているのだが、頭に血が昇っている今の状態では、そこまで気が回らない。
「確かに今回はあんたにも皆にも迷惑をかけたよ!
 でも、次は必ず上手くやってみせる、絶対だ!」
 勢い込むエドワードの言葉に、彼が思い違いをしている事を感じ、ロイは静かに笑って、首を横に振る。
「違う、鋼の、そうじゃないんだ。 
 今回の事は、…確かに君の経験不足もあっただろう。
 が、それ以前に、こちら側の落ち度なんだ。
 済まなかった」
 深々と頭を下げられて、昇っていた血が一気に下がる。
「や…めろよ。 迷惑かけたのも、足手まといになったのも、俺の責任だ。
 あんなに謝られる筋合いは…ないぜ」
 屈辱に頬を染め、唇を噛み締めたまま、そっぽを向くエドワードに、
ロイは彼なりの謝罪を感じて、頬を緩ませる。
「そうだな。 これからはもう少し、自己管理には気をつけた方がいい。
 アルフォンス君が嘆いていたよ、兄さんは無茶ばかりするってね」
 窘めるように告げられた言葉には、思い当たる節が多すぎて、反論が出来なかった。
 黙って耳だけ傾けている相手に、ロイは話を続ける。
「そして、それを差し引いても、今回の事は軍側のミス…、いや、私の認識の甘さだな」
「あんたの?」
 そう言われて、思わず視線を戻す。
「ああ、まさか情報を差し引いてまで、嫌がらせを仕掛けてくるとはね。
 自分の憎まれ度合いの認識が甘かったようだ」
 軽く笑いを含んで告げられる話の内容に、エドワードは知らず身震いをする。
 人一人の命がかかっていると言うのに、そんなつまらぬ感情で、
 足を引っ張ろうとする人間が居るなんて…。
 信じられないと告げようとして、口を閉ざす。
 現に自分たちは、危ない状況まで追いやられていたのだ。
 これで、ロイが優秀な錬金術師でなければ、少なくとも自分は生命も危なかっただろう。

 エドワードは改めて、目の前に座る男を見る。
 そんな世界を平然と渡り歩き、生き残る、強い男を。

「これは大きな借りだ。 最悪、君の命を無くしていたかも知れないほどのね。
 これを仕掛けた人間には、それ相応の罰を受けてもらうが、先に君への借りを清算しておきたい」
「借り? 清算?」
 いまいち話の流れが掴めず、エドワードは言葉を繰り返す。

「ああ、君への借りの清算だ。

 鋼の、いや、エドワード。 
 君は軍を辞めなさい」

 きっぱりと告げられる言葉には、有無を言わせぬ力が籠められている。
 余りに当たり前に言われたから、思わずロイの言葉が正しいような気がさせられた。
「はっ? あんた、何言ってんの?
 ちょ、冗談きついぜ! 何で、借りの清算に、俺が軍を辞めなくちゃ行けないんだよ?
 逆だろ? 止めるのは、今回の悪事を仕掛けた奴で、俺じゃないだろ!」
 必死のエドワードの言葉にも、ロイは表情を緩める事が無い。
 そんな相手の不動の態度から、エドワードは初めて、ロイの事を怖いと思った。
 ―― この男にかかれば、俺の軍籍なんて、塵芥みたいに消されてしまうんだ ――
 愕然としているエドワードに、ロイが言葉を続けていく。
「相手には、それ相応の報いを受けてもらうと言っただろ?
 君には本当に迷惑をかけたと思っている。
 だからと言って、軍籍を抜けられない君の事情もわかっている。
 なので、エドワード、賢者の石の探索は、私が引き継ごう」
 
 信じられない言葉に、エドワードは馬鹿みたいに呆けたまま、ロイを凝視し続ける。
「君達よりは、掛けれる時間が限られているから、時間はかかるかも知れないが、
 必ず見つけると約束する」
 エドワードは言うべき言葉が見つからない。 ロイは一体、どんな真意を持って、
 こんな事を言ってくるのだろう。
 真摯な態度から、これが冗談や気まぐれで言われたのではない事は、いくら子供だと言っても、
 伝わってくるもので判る、判るが…。
 エドワードは冷め始めた意識で、ロイの本意を探るような視線を向ける。
 何一つ、誤魔化しも、曇りも見落とさない気概で。

「軍では危険が付き纏う。 君の目的の為になるどころか、逆に到達出来ない事だって予測できるだろう。
 それなら、そんなリスクは負わず、私を信じて待っていてくれないか?」
 懸命に説得を試みるロイの様子に、エドワードは瞳を眇める。
 そして、フル回転する頭の中で、何が彼をそんな風に突き上げているのかを考える。
 ―― おかしいよな、何でこんなにこいつが必死にならなくちゃいけないんだ? ―― 
 そうだ…、余りにも必死すぎるのだ、ロイの様相は。
 自分の我が身の事ならば、決死の覚悟をするのも判る。
 でも、ロイにはロイの野望があって…。
 何がロイをこんなにも追い立てているのか…。
 暫しの思案後。
「判った、あんたの話も一案に入れてもいい」
 そんなエドワードの言葉に、途端にロイの表情が明るくなる。
「そうか、判ってくれたか。 なら、善は急げだ。直ぐさま中尉に書類と、これから先のことを」
 矢継ぎ早に進められる話に、エドワードは大きな嘆息を付いて、弾くように言葉を放つ。
「待てよ! 俺らの生き方だ、全部あんたに決められて堪るか!
 俺は『一案に入れても良い』と言っただけで、認めると言ったわけじゃない!
 それはあんたの話を、全部聞き終わってからだ」
 エドワードの毅然とした態度に、ロイも急き過ぎる自分の気持ちを一旦鎮める。
「…それは当然だな。 では何を話せばいい?」
 相手が落ち着きを取り戻したのを確認して、エドワードが質問をして行く。
「まずは、何でいきなり、こんな話を持ち出したのかって事だ」
 そのエドワードの質問に、一瞬の見間違いと思う程の短さで、ロイの視線が、
 虚空を彷徨い、次の瞬間には、そんな事が無かったように、
 エドワードに視線を据えて、話し出す。
「それは話したとおり、君に迷惑をかけた償いだ。
 勿論、軍が子供にとって危険だと言う事もある。 
 別に君らの能力を低く見ているわけではない。
 が、やはり軍部には、それ以上の」

「お為ごかしは良いって!! あんたそれこそ、俺を馬鹿にし過ぎてるんじゃないのかよ?
 軍での危険なんて、誘われた時から判っていた事だろ! 
 何で今更、あんたがそんな下らない事で、俺を追い出そうとするんだよ!
 嘘を付くなら、もっとマシなのを付けよ」
 傷ついたような表情で、最後の言葉を言うエドワードの様子に、ロイは何度も首を振る。
「違う、本当なんだ。 それが、今偽らない、私の気持ちなんだ…」
 その言葉が、余りにも哀しげで、エドワードは思わず見つめた先にある、
 ロイの表情に怒りが鎮まっていくのを感じた。
 それ程、ロイは傷ついた表情を見せている。 いや、それだけじゃない。
 入って来た時に思ったでは無いか、覇気が無いと…。
 それはつまり、弱りきっていると言う事で。
 なら、今ロイが口にしている事は、エドワードに対してではなく、自分への弱音を
 吐き出しているという事にならないだろうか?
「あんた、一体どうしたんだよ? 
 軍が危険って…、そんな事あんたには判りきっていたことだろ?」
 そのエドワードの言葉に、ロイは悄然と首を振る。
「そうだ…、判っていた筈なんだ、頭では。
 それでも、リスクある賭けだとしても、乗るしかない君達なら、
 仕方ない事だろうと割り切ってもいた。
 
 そう、私は本当の意味で、自分がしでかした残酷な振る舞いには、気づいていなかったんだ」
 ロイが語りだす話を静かに聞いている。 口を挟める気配もないが、有ったとしても、
 挟んではいけないような…。
 これはロイの独白なのだ。 本来なら、誰も、今回の要因の自分でさえ、聞けない筈の…。

「が、熱で魘されている時の、君の身体に広がる無数の傷跡を見た時、自分が強いた過酷な道を
 目の当たりにした気がして、傲慢だった自分を思い知らされ、叩き落された気になった。
 
 君を、君たちを悪魔に引き渡したのは、過去の罪ではなく、己の愚かな浅慮なのではないかと…ね。
 本当に君らがこの道を、幼い身体を楯にして進む価値があるのかどうか、私には判らなくなってしまった。

 今なら、命がある今なら、引き戻せる。 
 失ってしまえば、戻る事さえ出来なくなるんだ。
 だから、引いてくれ、鋼の」
 
 エドワードは思いもよらない、ロイの甘さを垣間見た気がした。
 彼は優しい人だと、アルフォンスが良く言う言葉。
 自身にはどこまでも厳しいくせに、懐にしまい、或いは目端に止めてしまえば、見捨てる事さえ出来ない人間。
 勿論、それは彼のほんの一部分で、意思の力で切り捨てる事も出来る、強靭さと冷酷さも持ち具えている。
 が…、彼の本質は、命を尊ぶ善良な精神なのだろう。
 
 エドワードは困り果てたように、窓から見える景色に視線を映す。
 もうじき、アルフォンスも帰ってくるだろう。
 こういう時には、自分より、情緒を解する弟のほうが、上手く対応出来るのではないだろうか…。
 自責と悔恨の念で埋もれている人間など、とても自分には手に追えない。
 そう、同様の自分自身で、手一杯なのだから…。

 が、それでも答えるのは、エドワードでないと駄目なような気がする。
 いや、同等のものを背負っている、自分でなくてはならないのかも知れない…。
 そう考えが行き着いて、エドワードは話し出すために、深呼吸をする。



「なぁ、大佐、今日はいい天気だよな?」
「鋼の…?」
 全く場違いな事を話し出したエドワードに、ロイは不審そうな目を向けてくる。
 が、エドワードだって、自分は馬鹿みたいだと思っているのだ。
「俺らさ、年がら年中旅して歩いてるだろ? アルは血印もあるし、俺もこんな手足だから、
 良い天気の日には、何だか嬉しくなっちまうんだ。
 アルは、日の暖かさや、風の気持ち良さとかは感じられないけど、それでも穏かな風景や、
 嬉しそうにしている人達の表情から、ちゃんと良い天気だって感じる事が出来るんだ。

 なぁ、俺らにそんな日を取り戻させてくれたのは…。
 間違いなくあんたなんだぜ?」
「は・・がねの…」
「あんたが引っ張りだしてくれなけりゃ、俺らは失意と恐怖の中、
 延々とモグラみたいに籠もって過ごしていた筈だ。
 
 天気の日が気持ち良い事は、冷たい雨が振るから気づくんだ。
 辛い事も、悲しい事も、嫌な事も、痛い思いも、自分の意思で動いて、
 自分の身体で受けるから感じられるんだよ。
 それって、凄く大切な事じゃないか?
 いいとこばっか取って貰ってたって、気づけなくなるだろ?

 だから俺らは、そんな風に動けるようにしてくれたあんたに……。
 そのぉ…、これでもちゃんと感謝してるんだってことだ!」
 照れくささを隠すために、最後の言葉は勢い込んで早口で告げる。
 そして、ちらりと相手の様子を盗み見て、エドワードの動きが止まってしまう。
「あっ、あっ、あんたー! なんて顔してんだよ!
 馬っ鹿みたいに口開けてさ、眉、眉へたってんぞ!!」
 雰囲気などお構い無しの子供は、珍しいモノを見たと大喜びで笑い転げている。

 ゲラゲラと笑い転げている子供を見ながら、ロイはハッーと大きな息を吐き出しながら、
 肩の力を抜く。
『子供の強さには、勝てるものはないな…』
 苦虫を噛み潰したような表情で、自分の負けを認める。
 決まった未来しか予測できない大人と、無限の可能性を秘めている子供とでは、
 勝負は始めからついていたようなものだ。
 
 ―― 私が彼らの強さを、一番に信じてやらなくて、どうするんだ… ――
  
「いい加減に、笑い止みたまえ。 君くらいだぞ、この私の顔で、それだけ笑い転げれる失礼な人間は」
 憮然とした口調に、エドワードは『おやっ?』と内心思う。
「いやぁ、面白いもん見せてもらったぜ。 あんたの自慢の顔も、あーんな形相浮かべてると、
 百年の恋人も裸足で逃げ去るぜ」
 そんないつもの軽口を叩いてやると。
「ふ…ん。 そんな心配は無用だ。 もう金輪際、君の心配など無用だと判ったからな」
 いつもの彼らしい物言いが返ってきて、エドワードは何だか心の中が嬉しくなる。
「当ったり前だろ? あんたに心配されるようになったら、俺も耄碌したって悲観するしかないじゃんか」
「全くだ。 馬鹿馬鹿しい事に、私の繊細な心を痛めてしまったとは、不覚だな」
「繊細って、言葉の意味間違ってるんじゃないの?
 あんたのは、図々しい・図太い・杜撰の3Gだって」
「君な、言葉が過ぎるんじゃないのか?
 いくら温厚な私でも、お仕置きをするぞ」
 捕まえようと伸ばされた手を、素早くやり過ごすと、盛大に舌を出してやる。
 そして、しっかりとロイを見据えて、エドワードは胸を張って宣言する。

「大佐、あんたはそこで見ててくれ。 
 俺らは必ず取り戻す。 
 取り戻してから、改めて告げてやるよ。
『大佐は間違っていなかった』ってな」

 太陽のように強く、明るい笑みが、眩しくロイの瞳に突き刺さる。
 そして、今にも羽ばたいて行きそうな勢いを、憧憬に近い思いで見つめる。
「あっ、アルの奴が帰ってきた。
 おーい、何買って来てくれたんだぁー」
 窓から乗り出して、話し出す背中に、ロイは遅れた返事を囁く。
「ああ、その時を楽しみに待っているよ」
 と…。





 ***

「中将、中将? 大丈夫ですか?」
 心配そうに掛けられた声に、ふと眠ってしまっていた自分を気づかされる。
「ああ、君か…。 
 どうやら、転寝していたようだな」
 寝ていたところを起こされたにしては、機嫌が良さそうな上司の様子に、ホークアイは優しげな言葉をかける。
「良い夢を見ておられたようですね」
 どんなとも、何のとも問わない。 もうずっと、彼の感情が目に見えて顕れる時は、
 たった一人の人物に関係する時だけだからだ。
「ああ、とても懐かしい夢をね」
 それ以上は語らず、久しぶりの天気の良い窓からの風景に、優しい視線を送っている。
「それは宜しかったですね。 出来上がった書類は頂いていきます。
 失礼致しました」
 副官が静かに出て行った後も、ロイは降り注ぐ日差しが眩しい、外の光景に思いを馳せる。



 … 『大佐ぁー、あんたは間違って無かったぜ』 …
 
 今は遠い、明るい声が、ロイの中を木霊する。
 それは永遠に忘れられない瞬間の、彼の大切な宝物の時だった。









 ~ Venus & Mars ~
    《平和をもたらす者と戦争をもたらす者》







 今日は就任式には相応しい、晴天広がる爽やかな日だ。
 ロイは窓に広がる心和む風景を眺めるでもなく、険しい表情で、手元の報告書を読み上げていく。

 トントントンと、規則正しい打音を鳴らせながら、入室の許可を求める声が聞こえてくる。
「入れ」 その短い一言を発する間も、ロイが書面から視線を上げる事は無い。
 尤も、誰が入ってくるかを、理解しきっているからでもあるだろう。
「失礼致します」
 その声の後に続く嘆息が、ロイの耳に届いて、漸くロイは顔を上げて入って来た者の姿を見る。
「どうした? 何か有ったのか?」
 普段と違う副官の様子に、ロイは訝しそうに質問する。
「いえ、何も無いから困っているのです」
 副官の妙な言い回しに、ロイは不思議そうに首を傾げてくる。
「閣下…。 本日は何の日かはお解かりですね?」
「? ああ、勿論だろ? 正午十三時より、就任式がある、私のな」
 それがどうしたと言うように視線を送ってくる相手に、ホークアイが困ったような表情をする。
 ロイはそんな珍しい副官の様子に、思わず時間でも過ぎたのかと、チラリと時計を眺めるが、
 指定の時刻にはまだ三十分も時間がある。
「閣下、申しわけございませんが、そろそろデスクを離れて頂き、式典の準備をお願い致します。 
 皆が、閣下のお越しが遅いと、やきもきしておりますから」
「準備と言っても…、特に私がするような事も、残っていなかっただろ?」
 なら時間が勿体無いとばかりに、再び書面に視線を落とそうとした矢先。
「閣下! 私は準備をして下さいと申しました!
 隣の部屋ではスタイリストが、閣下のお越しを今か今かと朝から待ち望んでいるのですよ。
 さっさと行って、そのくたびれた制服を着替えてきて下さい」
 ホークアイの叱責に、慌てて席を立ち上がり、ロイはそそくさと隣の部屋へと移動し始める。
 昔も今も、彼女には逆らえない。
『たかが男の着替えなどに、何故貴重な時間を割かなくてはいけないのか』 
 それを言えば、この後の就任式も面倒な事だ。
 出来るだけ実務的に進めるよう、華美な形式だけのものは無くしたが、
 それでもダラダラとこなさなくては成らないものも、結構ある。
 ―― そんなお飾りに、使う時間など無いと言うのに ――
 
 今日、ロイは漸く大総統への地位を上り詰める。
 エドワードが張り巡らした策が、動き始めて丁度一年。
 直ぐにでも、ロイを総統にとの声も高かったが、頑固な上層部が引渡しを渋って、
 1年の歳月がかかってしまった。
 それでも、異例の大抜擢だろう。
 その輝かしい第一歩が始まる日と言うのに、ロイの態度も行動も変わりはなかった。
 彼にはこの先への唯の通過点の一つで、特に感慨深いものでも無くなって、久しいのだが…。
 それでも、共に苦労をしてきてくれた者達にとっては、晴れの舞台だ。 面倒くさがるばかりでなく、
 答えれることは答えてやらねば。
 そう思った時点で、ホークアイの正装を褒めるのを忘れた事に気が付いた。
「しまったな、彼女には初の式典着だったのに」
 そんな呟きが彼女の耳に入れば、『まずは自分の事に気を回して下さい』と、
 呆れ返られる事になるのは、ロイの念頭には入っていなかった。

 着替え終わって廊下に出て行くと、誇らしげに自分を見つめてくる仲間の姿があった。
 皆、ロイと一緒に順当に昇格していき、今ではロイの直属部隊として、
 軍部の者達に一目も二目も置かれる立場になっている。
 ロイは暫く、その仲間達の前に立、一人一人に視線を向ける。
 そして。
「行くぞ、付いて来い」
 その一声で、颯爽と歩き出す。
「「「 Aye aye, Sir !! 」」」
 皆の声が唱和され、高らかに上げられる。
 
 彼らの未来は、ここが終点ではない。
 ここからが、本当の意味での始まりで、幕開けなのだ。
 
 大音声の歓声の中、未来へと希望を抱きながら、足早に進んでいく。
 この忙しない上司の下では、トロトロと歩いていようものなら、置いてけぼり決定だ。
 前を進む、圧倒的な存在感を見せる背中を見つめながら、今はここに居て、
 これを見届けれない大切な同志を、追いかける者達皆の胸に、浮かび上がらせている。


『大将…、代わりに俺が、しっかり見といてやるからな』
『戻ってきたら、どんだけあの人が格好良かったか、話してやるぜ』
『早く戻ってきてくださいね』
『我々も、全力で頑張ります』

『エドワード君、閣下を、この人を見守ってあげていてね。
 どちらが欠けても、もうそれは既にそれぞれではないわ。
 貴方がこの人の横に並べるまで、私達闘い続けるから…』

 皆の祈りが聞こえたのか、ロイが立ち止まり、天高い空を仰ぎ見る。
 数瞬、黙想するように瞳を閉じたかと思うと、次には鋭い眼光で、
 階下に広がる光景に挑むように視線を定める。
 きっと彼の瞳には、居並ぶ群集以外のものが映っているのだろう。

 
 突き抜けるような蒼い空の上では、強い風に押されるように、次々と雲が流れ去っていく。
 彼らの切なる願いを含んで、遠い異国に居る同胞の地では、
 きっとそれが恵みの雨となって、彼らの元に降り注ぐのだろう。

 

 


 ロイは就任後、まずは乱れが生じた、軍内部の統制を整えると平行して、内政の安定を図っていった。
 軍の暗部の全てを片付けるには、まだまだ時間はかかるが、少なくとも過去のように軍の横暴が横行したり、
 市民の事柄が軍事よりも貶められる事は、徐々に減って行くようになってきた。
 住み易くなるにつれ、国民達は正直なもので、むやみやたらと軍や軍人を毛嫌いする傾向が減ってくる。
 最近は聞き込み捜査や、市井の巡回や査察もやりやすくなったと、部下のハボックたちが喜んでいた。
 大きな変化ではないが、日常の中で少しずつ変わっていっている。


 総統府の執務室では、若き総統が固い表情で、部下の報告を受けている。
「どちらの国も、なかなか芳しい返答はありません。 かと言って、無下に断る様子も有りませんから、
 状況を視ているのかも知れません」
 ファルマンの報告に、ロイは知らず知らずのうちに、指で机を叩いている。
 これは彼が考えを巡らせている時にする癖だ。
「でも、何ででしょうかね? 結構、どこにとっても有益な事だと思うんですがね?」
 一緒に報告を聞いていたメンバーから、疑問の声が上がる。
「そのぉ、私の思うところですと…、今のアメトリスなら組み伏せ易いと思われているのではないかと」
 言葉を濁して、ファルマンがそう答えてくる。 彼はロイの代理で、各国と和平の話し合いを行っているから、
 相手国の対応に、何か思う処があるのだろう。
「組み伏せ易い? 何だ、それ? 俺らが弱っちいともでも言うわけか?」
 ハボックはそう返しながら、嫌そうに顔を顰める。
「言葉は悪いけど、そのようなもんでしょうね」
「ああ。 ここんとこ総統不在でごちゃごちゃしてたのが、結構長引いただろ? 
 他所さんから見れば、和平で地道な利益を上げるより、分捕る方が、美味しく見えるんだろうさ」
 ブレダの説明に、ハボックがげんなりした様子で首を振る。

 ロイは何も口を挟まずに、話を聞いていた。
 前大総統の時には、圧倒的な武力をもって国を統治していたから、諸外国も迂闊には手を出しては来れなかった。
 その総統が失脚し、内紛が続いていたと思ったら、若いひよこの総統が台頭したとなると、
 周囲にチャンスだと思われても仕方が無いのだろう。
 ロイは弾いていた指を、ふと止めてハボックの方に視線を回す。
「ハボック、北方の県境の戦況はどうなってるんだ?」
 いきなり話を振られても、僅かな動揺も見せずに、ハボックが返答していく。
 どんな時でも、瞬時に切り替えれる頭が無くては、この総統の下では付いていけない。
「あちらも、あんまり良くないですね。 領土侵犯になるからって警告は、まるっきり無視みたいっす。
 アームストロング女将軍の脅しでも引かないってのは、いつもの小競り合いのつもりは無いって事でしょうかね?
 まぁ、どっちにしても、もう直に、冬で凍結されるんで、進軍する腹積もりでも、春からって予想だそうです」
 その報告に、ロイは小さく頷いて、ホークアイ大佐に話しかける。
「大佐、やはりスケジュールを調整して貰うことになりそうだ」
「…快諾をしたくは有りませんが、仕方ありません。
 出立はいつのご予定で?」
 ホークアイの表情は冴えないままだが、それでも手筈を整える準備にかかってくれるようだ。
「今すぐ。 と言いたいところだが、君の心労を考えると止めた方がいいだろうな。
 一週間後までに頼む」
「判りました。 直ぐに手配を始めます」
 そこまでの遣り取りを、茫然と見ていたメンバーに、ロイが向き直り指令を与える。
「1週間後の同曜に、北方戦線に参入する。 部隊は小隊だけでいい。
 皆からは、ホークアイ大佐とハボック少佐の二名に付いて来て貰おう。
 後の手順は、ホークアイ大佐の指示に従って行え」
 話の展開が早すぎて、皆が驚きで目を丸くしている間に、ロイは次々と指示書を書き上げていく。

 ぞろぞろと執務室を出て戻る最中、誰も今の話を持ち出したりせず、足早に司令室へと入っていく。
 パタンと扉が閉じるや否や、口々にホークアイ大佐に問いかけていく。
「大佐、北方に参入って、総統自ら行く気ですか?」
「それは拙いんじゃないですかね? あちらには、あの女将軍も居ますから…」
 皆からの問いかけに、ホークアイも重い吐息を吐き出す。
「ええ、総統自らお行きになるおつもりです…。
 これは少し前に話されていたことでも有るのだけど、もし最悪和平交渉が滞っている間に、
戦局が開かれるような事があれば、出るのも止むえないだろう、って」
「それは和平に応じさせる手段として…、ですか?」
「そうね。それもあるんだろうと思うわ。
 後は、武力による干渉を、今後出さない為ね」
「武力干渉…」
「ええ、武力交渉が無意味、或いは大きな損害になると判れば、簡単に手を出しては来なくなるし、
 和平交渉の材料にもなる…とお考えなんだと思うの」
「で、でもそれって…」
 言い淀むフュリーに、ホークアイが頷いて返す。
「言いたい事は判るわ。 武力交渉を防ぐ為に、武力で制圧するのでは、同じ穴の狢だと…ね。
 でも、現実は理想どうりには行かない事も有るものよ。 それに総統は、決してチャンスを作る為に、
 自分から仕掛けるような事は、考えてはいらっしゃらなかったの」
「だが、付入る機会を相手が作った…と」
「そうね…、そうなるわね」
 ロイとて、出来ればそんな手を使いたかったわけでは無いだろう、が情勢は急激に変わっていく。
 引いてしまうわけにはいかない時もあるのだ。
「と言う事で、1週間の間に、手筈を整えていくわよ」
 良い悪いを議論している時間は無いのだ。 それよりもこの行動を良い方向へと導く事が先決だ。
 実行すると決定された今、出来る限り全力で望めるようにするのが、彼らの任務なのだから。


 ***

「マスタング総統が戦線にやって来るだと?」
 セントラルからの連絡文を読み上げていた部下の言葉に、不快そうな声を上げたのは、
 女だてらに北方司令部の司令官のオリヴィエ・ミラ・アームストロング女将軍だ。
「はっ、はい。 文面にはそう書かれてあります」
 女将軍の機嫌を損ねた事に、ビクビクしながら伝令係が周囲におどおどと視線を彷徨わす。
「貸してみろ」
 彼女直属の猛者の一人が差し出す手に、慌てて書面を渡す。
 暫く文面を読んでいた男は、奇妙に表情を引き攣らせる。 それがこの男の笑みの表情だと、
 近しい者は知っている。
「ベアー、何て書いてあるんだ?」
 熊と呼ばれた男の横に立っていた者が、すかさず伺って来る。
「伍長、ご苦労だった、下がって良い」
 問いかけには答えずに、所在無げにしている伝令係に下がるよう言ってやる。 
 伝令係がホッとしたように去っていった後、徐に書面の内容を語りだす。
「総統が来られると言うのは本当らしいですな。 しかも、戦線に参入して、協力して下さるそうです。
 差し出た振る舞いに、お気を悪くされないで貰えれば有り難いと書かれております」
 そう告げた言葉に、周囲の部下達が気色ばむ。
「どう言った了見だ! 我々では頼りないとでも言うのか!」
「我らが女将軍が配する、北方部隊に対する侮辱だ!」
「元はと言えば、総統の地位に就けたのも、閣下のご推挙があってのことを! 思い上がり甚だしい輩め!」
 荒くれが揃う北方の兵士は気性が短いことでも有名だ。 口々に騒ぐ中、伝令を読み上げた男と、
 女将軍だけが黙秘している。
 暫しの悪態を吐いていた者達も、黙り込む二人に気圧された様に口を噤んでいく。
「ベアー、お迎えの準備をしろ。 就任以来初の来訪だ、粗相の無いようにな」
「はっ、お任せ下さい」
 がたいの良い体躯で隙無い礼を返してくる。
 それで用件は終わりだと言うように、女将軍がひらひらと手の平を振ると、
 他の者達もベアーに従って礼をし、退出していく。
 皆が出て行き、ベアーと二人っきりになると女将軍が口を開く。
「さて、どういった御積りだろうな」
 それは訊ねると言うよりは、照らし合わすために聞いた言葉だ。
「そうですな、閣下の御高配の全ては、私には判りかねますが、多分1つには、
 この戦況を転じて、諸国への牽制材料にされるおつもりなのでは?」
「ふん…、小賢しい真似を考えたものだ。
 が、対面で会うのは、就任前からになるから、楽しみだな」
 口元に人の悪い笑みを浮かべて、そう告げる女将軍にベアーが呆れたような表情で、忠告を告げてくる。
「女将軍、程ほどに頼みますぞ」
「判っている。 ちょっと突いた位で、ベソをかいて逃げ出すような玉でも有るまいし。
 多少の歓迎は必要だろ?」
 楽しそうに話す彼女に、ベアーは深い嘆息を吐く。


 副官が退出して行った後、オリヴィエは椅子に背を預けながら、窓の外、
 チラホラと舞い落ちてくる雪を眺めていた。
 ーーー あの金髪の小僧っ子が来たのも、丁度、この位の時期だったな ーーー
 舞い落ちる雪景色の向うに、数年前の邂逅を思い出していく。



 





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